本研究の目的は、ロシア語母語話者による日本語音声の習得過程を明らかにすることである。研究代表者は、平成25年にモスクワにおいてロシア語母語話者52人の日本語音声データを収録している(迫田2014)。本研究は、縦断的な調査方法によって習得過程を明らかにするため、同一の被験者24人に対して、平成26年度にも音声データの収集を行った。 平成27年度には、収集した膨大な量の音声データの文字化作業と、学習者の日本語レベルの判定を行った。それをもとに、平成27年8月にヨーロッパの日本語教師連絡会議にて、ロシア語母語話者による日本語音声習得研究の概要をまとめた研究発表を行った。平成28年3月には、ロシア語母語話者の日本語レベルの観点から分析を行った研究論文を発表した。海外の外国語学習環境であるモスクワのロシア語母語話者が、日本語能力初級レベルから中級レベルに進む速度は1年未満と比較的速いが、中級レベル以上の向上速度は緩やかであることが、研究により明らかになった。これまでロシア語母語話者の日本語習得に関する実証研究はほとんど行われていないため、日本語習得について部分的にも明らかにできたことは研究史上において意義がある。 この音声データの分析は現在も進行中であり、さらに興味深い考察が可能であると考えられる。実証的な縦断研究によって、ロシア語母語話者の日本語音声習得上の困難点が明らかになり、習得過程の予測が可能になることが見込まれる。さらに、ロシア語母語話者による音声習得過程の分析を行うため、平成28年度にもモスクワにおいて同一被験者の縦断的な音声データを収集する予定である。
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