第二次世界大戦後、日系アメリカ人と中国系アメリカ人が、東アジアの政府・人々とどのような関係を結び、どのようにアメリカ合衆国政府の対アジア政策に介入したのかを考察し、国内的な文脈と国際的な文脈の両方と関連付けながらアジア系アメリカ人の国際主義の形成過程を明らかにする本研究の目的に向けて、今年度も資料の収集を行いながら、その成果の一部を学会での報告と学術論文の出版という形で発表した。本研究と同じようにアメリカ史を国境の内外を接続させる視点から歴史的事象を分析する研究の成果が、アメリカ合衆国を中心に発表されているので、これらの新しい研究の成果である書籍の収集を引き続き行い、方法論の発展に務めた。また、アメリカ合衆国カリフォルニア州のロサンゼルスにあるカリフォルニア大学ロサンゼルス校ヤング研究図書館や、京都府の立命館大学に所蔵されている一次資料を調査・入手した。そして、これらの資料収集・分析の成果の一部を、日本アメリカ史学会などで報告した。また、アメリカ学会発行の『アメリカ研究』に1990年代から2000年代初めの時期に、アジア系アメリカ人が日本政府に対して1930年代・1940年代の日本軍の行った戦争犯罪の被害者に対する謝罪・補償要求運動開始した理由と経緯を明らかにする論文を発表した。この論考は、アメリカの人種関係と国際関係との結びつきを示しながら、国境な内と外との連続性を強調するアメリカ史やエスニック・スタディーズの新しい研究と対話しながら、その流れを加速させる貢献をなすものである。
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