2015年11月19日から30日まで、オランダに出張した。主としてオランダ国立文書館において、マドラスと同時期に国際交易港として栄えた近隣の港町とその周辺地域に関する資料調査を実施した。併せて、ライデン大学を拠点に活動する複数の研究者と、進行中の研究に関して意見交換を行った。 また、2016年3月21-22日にインド・シッキム大学において開催されたワークショップに参加した。17-18世紀のコロマンデル海岸の港町が果たした海陸の交易のハブとしての役割に関する研究報告を行い、南アジア内陸部の交通・交易に詳しい研究者などと意見交換する機会を得た。 研究成果としては、前年度からの調査によって得られた資料の分析を進め、マドラスと同様にコロマンデル海岸に位置する港町・ナーガパッティナムに関する論考を発表した。17世紀後半にオランダ東インド会社が進出し、その後、同社の主要な活動拠点がおかれたナーガパッティナムは、イギリス東インド会社の活動と関係の深いマドラスの発展の過程を考察するうえで、比較の観点からとくに重要なところである。また、近世南アジアの港町に見られた西欧系居留民社会における女性たちの存在に注目した論文を発表した。さらに、16-17世紀の南アジアにおける女性に関する論文と、17-18世紀の南アジア(とくにコロマンデル海岸)と日本との間の交易を介したつながりについて取り上げた論文を含む2冊の共著を刊行した。
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