研究実績の概要 |
平成27年度は研究実施計画に基づき、神戸大学人文学研究科助教として勤務しつつ、第一段階・第二段階の続きと第三段階を遂行し、最後に総括を行った(エフォート:50%)。 【第一段階】新たに若干数の二次文献を購入して読解し、本研究の背景となる1689~1815年のブリテン諸島の社会・経済・軍事・国際関係の把握に努めた。 【第二段階】2つの史料[Southwell Papers (the National Library of Ireland, pos 24 and p. 1047)とDaniel Peck letterbook (the Chester Archives, ZCR 352)]を分析し、アイルランドを軸とした海上貿易防衛システムの受容と利用の実態解明を目指した。 【第三段階】3週間の在外史料調査を行った。ダブリンではSouthwell Papersの未入手部分を閲覧、複写した。また、現地の研究者と情報交換し、社会経済史家D. ディクソン教授からは本研究を基にした英語論文投稿への協力の確約を得た。ロンドンでは国立文書館において、キンセイル海軍基地の関連史料を収集し(対象期間:1689~1815年)海軍工廠からの書簡約1700点や帳簿等、予想以上の成果を得た。 この2年間の研究により、1695~1812年の5人のキンセイル海軍工廠責任者を特定し、工廠の活動が活発であったのは戦時と、同港の地主・サゼル家に有力な当主がいた18世紀前半であることを明らかにした。また、1745年の西方艦隊創設とプリマスの拠点化が護衛船団の寄港パターンに与えた影響を調査する必要があることを発見した。平成27年度の成果は計3回の口頭報告で発表され、報告を基にした論文1本が国際商業史研究会共著論文集(平成28年出版予定)に収録される。また、学部向けの講義(日本語1、英語2)を通じて、学生にも還元された。
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