本研究の三段階の調査から、アイルランドのキンセイル港で行われていた海上貿易防衛・軍事輸送・水兵捕虜の管理に関連する業務の詳細が得られ、さらにこれを統治体制・海軍行政・商業網といったブリテン諸島を統合するネットワークの中に位置づけることができた。その結果第二次百年戦争期(1689~1815年)において、キンセイルを含めた南マンスター沿岸部は、その地政学的理由からイギリス海上貿易防衛の拠点として、活動の質的・量的変化はありつつも一定の機能を維持しており、海軍・海事の紐帯により、ブリテン諸島、大陸ヨーロッパ、大西洋世界、イギリス帝国を繋いでいたという見解が得られた。
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