研究課題/領域番号 |
26884029
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
雲島 知恵 奈良女子大学, 理系女性教育開発共同機構, 講師 (50737434)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 英文学 / 旅行記研究 / ジェンダー / ポストコロニアリズム |
研究実績の概要 |
本研究は、両世界大戦期及び戦間期において大英帝国において出版された女性作家による日本及び日本人の表象を分析するものである。 平成26年度は、Elizabeth Keithとその周辺作家及びPriyambada Deviに関する資料収集・分析を進めると共に、Ada Elizabeth Chestertonとその同時代の作家達による日本旅行記の収集・調査を行った。Elizabeth Keithについては、彼女の日本旅行記Eastern Windowsと、妹Elspet Keith Robertson Scottとの共著である韓国旅行記Old Koreaをテクスト分析すると共に、義理の弟John William Robertson Scottが1917年から18年まで日本で編集・発行していた日英月刊誌The New Eastの調査を行った。大英図書館においては、Robertson ScottがSociety of Authorsに宛てた書簡の調査を行う中で、上記作品群の制作過程を知る上でのいくつかの重要な発見があった。また、渡邊木版美術画舗に渡邊庄三郎宛のElizabeth Keithの書簡等が未整理で残されていることも分かった。これら未整理の資料は、大正・昭和期における日本美術、特に新版画の海外での需要、外国作家らの果たした役割を知る上で非常に重要な資料である。この研究については、韓国の英文学会において口頭発表した。 Priyambada Deviについては、オックスフォード大学のOriental Institute Libraryの司書の協力を得て、1916年にベンガル語雑誌Manasiに掲載された日本舞台の短編小説Renukaを発見した。 本研究は、英文学の旅行記研究において見逃されてきた日本を俎上に載せるという点、また忘れ去られていた女性作家達を取り上げ、彼女達に関わる新たな資料の発見に繋がるという点に意義がある。また、女性史への貢献という点においても重要な意義を持つ。近年盛んになってきた戦争と文学との関わりを追究している点においても、重要な研究であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅延の最大の理由は、3月に予定していたコルカタへの資料収集・調査旅行を実現できなかったことである。冬頃から現地の治安が不安定であったこと、特に女性への暴行事件が問題となっていたことで、知人からインド渡航を見合わせることを勧められた。11月に渡航を延期し、現地の大学・研究機関等とのコネクション作り、図書館等での資料請求等の準備を十分に行ってから渡印した方が、研究調査に有利であること、また、気候的にも、日本人が現地で調査を行うには11月の方が適していること等を鑑みて、延期を決めた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Elizabeth Keithに関する研究をまとめると共に、Priyambada DeviとAda Elizabeth Chestertonの調査を中心に行っていく。 Priyambada Deviについては、20世紀初頭におけるベンガル人女性作家の研究書を多く出版しておりSchool of Women's Studiesを抱えインドの女性学研究をリードするJadavpur Universityの研究者の協力を得て進めて行く。 Ada Elizabeth Chestertonについては、彼女の同時代人であるEdith Sophy Balfour Lytteltonの日本旅行記との比較を通して、日中英関係を軸に研究を進めたい。
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