研究課題/領域番号 |
26884031
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
根本 裕史 広島大学, 文学研究科, 准教授 (00735871)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | チベット仏教 / チベット古典文学 / 中観思想 / 言語論 / 詩論 / 修辞学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、チベット仏教ゲルク派の創始者ツォンカパ(1359-1419)の中観思想・菩薩思想を考察すると共に、詩人として知られる彼の美文詩を中心に、14~15世紀頃のチベット古典文学の形成と発展について精査し、チベットにおける仏教思想と文学世界の融合について明らかにすることである。当該年度は以下の四点について研究を実施した。 [1]ツォンカパ『縁起讃』の思想研究。『縁起讃』に対する註釈書や関連文献を精査した。これによりツォンカパの自性論に見られる言語論を解明し、その成果を「チベット中観思想における自性の概念」としてまとめ『インド論理学研究』第7号に公表した。また、ツォンカパの空性論証の修道論的性格を、後代のジャムヤンシェーパ(1648-1721)の理解に沿って検討し、その成果に基づく口頭発表「ジャムヤンシェーパの空性論証と修道論」を広島哲学会にて行なった。 [2]『縁起讃』の文学世界に関する研究。チベット詩論書を参照しながら、従来学界で注目されていなかった『縁起讃』の文体と修辞法についての分析を行ない、得られた知見に基づく口頭発表「ツォンカパ『縁起讃』の文学世界」を日本チベット学会にて行なった。 [3]サンスクリット詩論『詩鏡』のチベット撰述註釈の研究。プーケーパ(1618-85)による『詩鏡』註釈の第一章冒頭部の解読を行ない、訳注を作成した。 [4]チベットにおけるサンスクリット叙情詩『雲の使い』の受容に関する研究。14世紀に成立したチベット語訳を原典と比較し検討すると共に、チベット古典文学に詳しいギャイ・ジャブ教授(青海師範大学)と共同でチベット語新訳を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に従って、[1]ツォンカパ『縁起讃』の思想研究、[2]『縁起讃』の文学世界に関する研究、[3]サンスクリット詩論『詩鏡』のチベット撰述註釈の研究、[4]チベットにおけるサンスクリット叙情詩『雲の使い』の受容に関する研究を行なった。進行状況はおおむね順調であり、学術大会における研究発表(2点)と、学術誌への論文投稿(1点)を行ない成果を残すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当該年度と同様の方法で研究を進める予定である。ツォンカパ『縁起讃』については、関連文献を網羅的に精査し、思想史と文学の両側面から作品に新たな光を当てる研究を遂行したい。14~15世紀のチベット古典文学の形成と発展を解明するに当たっては、ギャイ・ジャブ教授との共同研究会を開催し、意見交換を行なう予定である。また、当該年度内に作成したプーケーパ(1618-85)による『詩鏡』註釈の第一章冒頭部の訳注に立脚して、次年度で研究成果を発表することを予定している。
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