研究課題/領域番号 |
26884034
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
才津 祐美子 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (40412613)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 民俗学 / 文化遺産 / カクレキリシタン / 世界遺産 / 宗教 |
研究実績の概要 |
本研究は、現在もなお生きている信仰であるカクレキリシタンをめぐる文化遺産化の問題を主題とする。本研究の第一の目的は、現在長崎県で進んでいる「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の世界遺産化がカクレキリシタンへもたらす影響について明らかにすることである。また、こうした世界遺産化の動きの一方で、カクレキリシタンの数が減少し、消滅の危機に瀕していることから、秘蔵していたものを博物館等に寄付したり、博物館で一般の来館者を前に「オラショ」(祈祷文)を唱えたりする動きも見られる。こうしたいわば失われゆくカクレキリシタン習俗自体の文化遺産化の実態を明らかにすることもまた急務であり、それが本研究の第二の目的である。 以上のような研究目的のもと、平成26年度には次のような研究を行った。 1.先行研究を参考にしつつあるいは批判的に検証しつつ、長崎市外海地区において禁教令解除後のカクレキリシタンの歴史的推移や現状について聞き取り調査を行った。2.次年度の予備調査として、文化遺産化が進む平戸市においてジェネラル・サーベイを行った。3.本研究の申請段階で予想していたとおり、平成27年1月に長崎市外海地区・平戸市のいずれもが含まれる「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が正式に世界遺産候補として推薦された(推薦書(正式版)がUNESCOに提出された)。1、2の調査では、世界遺産化に向けたさまざまな取り組みとそれがカクレキリシタンに与える影響についても調査(聞き取り調査および文献資料調査)を行った。順調にいけば来年には世界遺産に登録されるため、現時点からこのような調査を行っておくことは非常に重要である。4.地域文化の文化遺産化や世界遺産化に関する日本および世界の動向を調べるため、また、1~3で行った現地調査を補完するための文献資料調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書で述べた研究実施計画のうち、世界遺産化に関する官公庁・関連部署への聞き取り調査はできなかったものの、(1)長崎市外海地区における聞き取り調査、(2)平戸市における予備調査、(3)世界遺産化に関する現地での調査、(4)文献資料調査のいずれも予定通りに遂行することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の通りである。 1.平成26年度に続いて長崎市外海地区において現地調査を行うとともに、カクレキリシタンの習俗が文化遺産化しつつある平戸市のカクレキリシタンについても現地調査を行う。2.「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の世界遺産化に向けた長崎県内のさまざまな取り組みとその影響について、官公庁・関連部署や観光関連団体の動向を調査するとともに、長崎市外海地区と平戸市においても聞き取り調査を行う。3.1、2の調査を補完する文献資料調査を行う。4.平成26年度に行った調査と1~3で行った調査の結果を分析し、関連学会等において成果発表を行う。
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