本研究では、それ一文では容認されないが、談話文脈に埋め込まれることで容認可能となる言語表現を考察し、その仕組みを原理的に説明することを目的とする。二年間のプロジェクトで、身体部位名詞を伴う再帰表現の受動化、および結果構文の目的語省略の二つの現象を観察し、その成立条件を提案した。両現象の成立に共通して重要となる点として、動詞が表す出来事の参与者の解釈や出来事自体の特性が、談話文脈に埋め込まれ現象に適した解釈を受けることで、容認可能となることが明らかとなった。この帰結は、単語の意味の総和以外に語順などの文形式や文脈の解釈が文法的振舞いに重要な役割を果たすという構文論的考え方を支持するものである。
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