2014年9月~2015年3月は、主に二つの観点から研究課題にアプローチした。一つは、J.A.ホブスンの厚生経済学とニューリベラリズムの政治思想の関係性を、彼のラスキンおよびヴェブレン受容の観点から考察することである。該当するホブスンの一次文献および最新のラスキン、ヴェブレン研究の収集を行い、読解・分析を進めた。その結果、ホブスンの厚生経済学の独自性が、従来注目されてきた過剰貯蓄・過少消費への注目に加え、事実と規範の関係についての洗練された方法論や、個人の経済活動における制度の社会学的作用の重視など、ラスキン、ヴェブレンの影響に基づく独自の方法論・社会理論に基づくものであったことが明らかとなった。本研究成果は、2015年度の日本イギリス理想主義学会で報告することが決定している。二つ目に、価値多元的な現代という時代において、ニューリベラリズムのような規範的な政治思想をいかに研究すべきかという、研究方法上の問題についても資料収集・考察を進めた。具体的には、政治思想を概念-言説-政治実践間のダイナミズムの産物と捉える、M.フリーデンによって定式化された「政治イデオロギー研究」の方法論分析を進めた。その結果、思想・科学・政治実践という複数の次元に思想家たちが深く関与したニューリベラリズムを研究するにあたって、政治イデオロギー研究が最適の研究方法であるとの結論を得るに至った。本研究成果を2015年度の社会思想史学会で報告することを予定している。
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