研究課題/領域番号 |
26884054
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
山中 悠希 東洋大学, 文学部, 講師 (40732756)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 国文学 / 枕草子 / 異本 |
研究実績の概要 |
本研究は、『枕草子』の享受の歴史と読者の問題に、異本生成という側面から迫るものであり、とくに堺本系統の伝本に着目して研究を進めている。 本研究期間内における研究目的は、堺本諸本の基本的な書誌調査と本文分析を深化させ、従来の本文分類法を更新することであるが、本年度は龍門文庫蔵『清少納言枕草紙』の本文調査結果からうかがえる後世の『枕草子』享受の一側面について、「龍門文庫蔵『清少納言枕草紙』にみえる江戸前期『枕草子』享受の一様相」として成果報告することができた。これは、既に出版されている翻刻から落ちていた傍記・書き入れについて改めて確認を行い、そのありようから、水戸藩の国学者周辺における『枕草子』の異本享受・『枕草子』研究について考察を行うものであり、これまでに指摘されることのなかった事項である。今後の課題としては、全体的な検討を行い、類例の収集、提示した説の補強を行うことが挙げられる。 また、いくつかの機関に訪問した結果、これまでに翻刻・検討されていなかった堺本の伝本が複数あることが判明したため、これらの基礎的な調査を行った。先行研究等のまったくない、新出資料と言って良い写本であり、堺本系統の本文調査を網羅的に行う本研究において見逃すことのできない資料が発見されたことになる。複写不許可の文献も含まれるため、慎重に調査を重ねていく必要があるが、来年度にもその一端を成果報告すべく、調査分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画には二つの柱を立てていた。そのひとつは龍門文庫蔵『清少納言枕草紙』の本文研究である。これはその分析の結果を文章として発表することができた。もうひとつの柱は台北大学蔵本のゆくえの調査およびその本文調査の準備段階としての桃園文庫本の調査である。しかしながら年度の途中において新出の写本の存在が判明し、本研究の目的の達成のためにはこれら新出資料の調査の必要性のほうが高いと判断した。 以上を総合すると、現在の達成度としては、おおむね順調に発展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究計画としては、宸翰本系統の写本の調査を設定している。従来知られている五つの写本に加えて、このたび実践女子大学および相愛大学に宸翰本系統の写本が存在することが明らかとなったため、これらの新出資料の分析をも同時に行っていく。未翻刻の資料であるため、すぐにすべての検討を終えることはできないが、まずは慎重に調査を行っていく。 そのうえで、現段階における堺本系統枕草子の最先端の研究成果を書籍として発表する。
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