本研究の目的は、17-18世紀におけるアラビア半島とインドとの学術交流の実態より、イスラーム改革思想の形成と展開を明らかにすることにある。学術交流の実態は、学者の経歴や専門分野について記録した伝記によって詳らかにすることができる。インド出身のムスリムで、アラビア半島への留学経験をもつシャー・ワリーウッラーの著作を中心に、本年度はアメリカとインドにおいて文献収集を行った。 アメリカでは、シカゴ大学図書館とアメリカ議会図書館において文献調査を行ったほか、シャー・ワリーウッラーの専門家であるロヨラ大学シカゴ校のマルシア・ヘルマンセン教授と面談し、今後の研究についての助言を得ることができた。 インドでは、以下の四都市において写本調査を行った。ハイデラーバードでは、Osmania University Library、Andhra Pradesh Government Oriental Manuscripts Library and Research Institute、State Central Library、Salar Jung Museum Libraryを訪問した。ラーンプルではRaza Library、アリーガルではMaulana Azad Library、ラクナウではNadwa al-'Ulama'を訪れ、シャー・ワリーウッラーの著作の所蔵状況について包括的な調査を行った。その結果、先行研究で指摘されていながらも所在の不明であった著作や先行研究で言及されていない著作を発見し、重要な著作についてはその一部の複写を得ることができた。 また、入手した文献に基づく学術交流の実態については、ディジタル・ヒューマニティーズの手法を活用し、その一部をネットワークとして視覚化することに成功した。
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