研究実績の概要 |
本研究では、第二言語音声習得を目的とした視聴覚トレーニングを日本語母語話者に対して行い、その効果を児童と成人の間で比較した。英語話者の成人は、音声を知覚する際、視覚で得た情報を聴覚の情報と統合するのに対し、日本語話者の成人は聴覚情報に頼り、視覚情報を聴覚情報と統合する傾向にない。こうした言語間での差は、6歳児の日本語話者と英語話者の間には表れず、母語の知覚を発達させるにつれて表れるものであった [1]。そこで本研究では、言語の発達段階にある日本語話者児童に対して、英語の音声を知覚するための視聴覚トレーニングを行い、視覚で得た情報を聴覚と統合して知覚できるようになるか、検証した。 平成27年度は、実験参加者(日本語話者の児童及び成人)に対し、10日間の英語音声視聴覚トレーニングを行い、日本語話者が英語音声/r/-/l/を識別できるようになるか、視覚、聴覚、視聴覚の3つの観点より測定した。その結果、トレーニングによってその識別能力は、児童及び成人共に有意に向上した。視聴覚による識別能力の向上は、聴覚のみによる識別能力の向上よりも有意に大きかったが、視覚のみによるものと比べて有意差は得られなかった。これは、視聴覚および視覚のみによる識別能力の向上が非常に高く、天井効果が起きたためであると推察される。さらに、児童と成人の間で向上率の差は得られなかった。 上記結果はすでに国際学会へ提出済みであり、現在査読を受けている。国際学会での発表だけでなく、国際ジャーナルへの投稿も今後行う予定である。
参考文献 [1] Sekiyama, K., Burnham, D., Tam, H., & Erdener, D. (2003). Auditory-visual speech perception development in Japanese and English speakers. AVSP 2003, 43-47.
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