研究課題/領域番号 |
26884064
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
東 聖子 早稲田大学, 人間科学学術院, 助手 (00735102)
|
研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
キーワード | パンジャーブ / インド / パキスタン / スィク / 移民 |
研究実績の概要 |
北米最大のスィク教徒コミュニティを有するカナダ・ヴァンクーバーを訪問し、集住地区、寺院、商業施設、商店、学校、移民支援団体、コミュニティ新聞社にて、関係者への聞き取りを実施した。ヴァンクーバー市内にはブリティッシュ・コロンビア州で一番古いスィク教寺院のほか、南アジア系住民が集まる商店街が存在するが、現在では地価が高騰するヴァンクーバ市内ではなく、市南東の郊外地区にインド・パンジャーブ出身の移民が集中していることが明らかになった。移民子弟教育のための学校、高齢者施設、定住のための支援、テレビ・ラジオ・新聞等メディア、コミュニティ・ホールなど、パンジャーブ移民に特化したサービスが多くみられた。地元の大学の一つであるブリティシュ・コロンビア大学ではアジア研究を専門とする学部があり、南アジア研究を専門とするコースもあるが、大学による南アジア系移民コミュニティーの調査は実施されていない。ただ、2014年は、パンジャーブ移民を乗せた船舶「駒形丸」がヴァンクーバー港への入港を不当に拒まれた事件から100年にあたり、その100周年記念のイベントには大学が主催するものもあった。このようにインド・パンジャーブ出身者を中心とするヴァンクーバー地区の南アジア系移民社会の様子や、地域の大学と南アジア系コミュニティの関係などが明らかとなった。 一方、カナダ東部の都市トロントには、ヴァンクーバー郊外にインド・パンジャーブ出身スィク教徒集住地区がみられたのと同様に、トロント市西部の郊外にパンジャーブ出身者の集住地区がみられた。しかしながらヴァンクーバーとの大きな違いは、インドのみならずパキスタン・パンジャーブ出身者が多く存在することであった。パンジャーブ移民に特化した様々なサービスがトロント郊外地区でもみられたが、これらはインド側だけではなくパキスタン側出身者も同様に想定されていることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インド・パキスタン双方のパンジャーブからの移民が多いカナダを調査地として選定し、研究のスタート段階として、とくにパンジャーブ移民の多いヴァンクーバーとトロントを訪問した。19世紀末から20世紀初頭にかけてのパンジャーブ移民初期の研究や、現在のコミュニティの問題点等を指摘する論文が先行研究としてあるが、それらの先行研究からは現在のコミュニティの概要や全体像を把握するのが困難であった。そのため、フィールド調査に赴き各地区のパンジャーブ移民社会の概要をつかむことが研究初年度の最大の目的であり、その目的はおおむね達成したと考えている。 上記の目的およびその達成は本研究の第一歩として必要不可欠な部分ではあるが、実際の研究および考察はこれからの作業である。それは、インド側パンジャーブとパキスタン側パンジャーブ双方からの移民が、どのように移住先で出会うのか、出会うことによってどのように自身のパンジャーブ文化を再認識するのか、移住先にて両地の出身者双方による新しいパンジャーブ文化がつくられるのか、それはどのような文化なのか、を調査することである。このような調査を実施するのは27年度となるが、具体的にどこで、どのようにフィールド調査を実施するのかを検討し、調査先へのコンタクトや調査趣旨の説明と調査実施の承認をとりつけ、27年度の調査実施の目処をたてることが出来た。 研究費交付の平成26年秋から同年度末までの間に本研究初年度に必要な成果をあげることが出来、翌27年度の調査に向けての準備を整わせることが出来たことから、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
研究2年目にあたる27年度は、参与観察を含む調査実施依頼への快諾を得ているトロント市郊外の2つの移住者支援組織を中心に調査を実施する。具体的には8月~9月にかけて、各組織のプログラムへの参与観察と参加者および主催者へのインタビューを実施する。実施にあたり、メールによる各組織担当者との事前打合せをおこなう。カナダへの渡航までには、関連する先行研究の最新のものをおさえておく。1月にも調査を実施し、3月までに2回行った調査結果の考察をおこない、成果をまとめる。
|