研究課題/領域番号 |
26884067
|
研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
小城 拓理 愛知学院大学, 総合政策学部, 講師 (10733040)
|
研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
キーワード | 哲学 / 倫理学 / 政治理論 / 政治哲学 / 思想史 / シティズンシップ / マイノリティ / リベラリズム |
研究実績の概要 |
ロールズの社会契約論の弱点をロックの社会契約論で補完することが本研究の目的である。ロールズの社会契約論は仮説的契約論であるため統治への服従義務が導出できない。そこで、本研究では現実的同意論であるロックの社会契約論を採用することで統治への服従義務を導出することを目指す。具体的には、ロックに倣い、居住の事実から同意を導くことですることで統治への服従義務を説明する。 しかし、ロックによると居住の事実から同意を導出するためには、その条件としてその社会の成員全員に開かれた立法部が必要となる。だが、立法部に参加できる成員の条件、すなわち成員資格の問題はこれまでほとんど問われたことがなかった。そこで本年度は、成員資格の問題に取り組んだ。その際には導きの糸として、成員資格研究の先駆者であるウォルツァーの検討を遂行した。その結果、ウォルツァーは成員資格の条件の中に社会のマジョリティへの文化的同化を読み込んでいることが明らかになった。このような文化的同化は社会の少数者への同化圧力ともなりかねない危険をもたらすものである。そしてまた、本研究の目的とする多文化共生社会の実現にとっても障害となるものである。これに対して本研究は、成員資格の条件の中にマジョリティへの文化的同化を必要としないことこそが、真の多文化共生に道を開くものであることを主張した。以上の研究はこれまで問われてこなかった成員資格の問題に光を当てる有意義なものであった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロールズの社会契約論の弱点である成員資格とマイノリティの問題に取り組み、ウォルツァーを手掛かりとしながら、一定の提言ができたことは評価に値すると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を継続しつつ、ロールズの社会契約論の弱点をロックのそれでもって補完する方向性を模索していく。具体的には、ロールズの社会契約論では不可能であった、政治的責務の導出を、ロックの暗黙の同意概念を用いることで可能にしたい。
|