インド・ラダックにおける仏教ナショナリズムの展開に関する研究

2014 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 26884068
• 研究機関: 名古屋学院大学
• 研究代表者: 宮坂 清 名古屋学院大学, 法学部, 講師 (50734000)
• 研究期間 (年度): 2014-08-29 – 2016-03-31
• キーワード: ラダック / 仏教ナショナリズム / 近代仏教

研究実績の概要

本研究は、ラダックにおいてチベット仏教徒が行なってきた仏教ナショナリズム運動の展開過程について、特に1947年から1989年の間に焦点をあてて調査研究を行うものである。本年度は、主に以下の3点について、作業を行った。
１，研究に必要な資料（書籍、論文、雑誌や新聞の記事）にどのようなものがあるかについて、手元にある文献、図書館やインターネットを使って調べ、その一覧を作成した。これまでにおよそ30の資料を記載した。２，未入手の資料について、どこでどのように収集することができるかについて、インターネットなどを用いて調べた。一部については所蔵先に問い合わせた。３，すでに手元にある資料を読み込んだ。主に、Bertelsenの論文2点（1997a, 1997b）である。そこに含まれる情報を大まかに分類する、年表を作成する、といった作業を行った。

Bertelsen, Kristoffer Brix 1997a. "Protestant Buddhism and Social Identification in Ladakh". in Archives Des Sciences Sociales Des Religions 99(1), 129-151.
Bertelsen, Kristoffer Brix 1997b. "Our Communalized Future. Sustainable Development, Social Identification and Politics of Representation in Ladakh. PhD thesis, Aarhus University.

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題は、概ね当初の予定通り本年度の目的を達成した。
本年度の研究実施計画に記載した作業は、先行研究の収集を進めること、そしてその先行研究および先行研究に含まれる二次資料の読み込みを進めて論点を整理する、という2点であった。
１，実際に先行研究の収集作業を行ったところ、3点の新たな先行研究に加え、雑誌や書籍に含まれる資料、インターネット上の資料がいくつも見つかった。そのため、これまでに収集済みの資料と合わせ、資料の一覧を作成し、内容別に整理するという作業を行った。
２，先行研究や資料を読み込み、そこに含まれる情報を大まかに分類し、年表の作成を行った。ただしまだ作業の途上であるため、今後も継続して行っていく必要がある。
以上のように、概ね当初の計画のとおり進展している。

今後の研究の推進方策

本研究は2年計画で行われる。2年目にあたる平成27年度は、前年度に進めてきた、先行研究や資料の収集、そしてそれらの読み込みを継続して行っていく。
また、夏期にラダックのレー市、そしてジャンムー市にて現地調査を行う。レー市では、ラダック仏教徒協会、ラダック僧院協会、大菩提会ラダック支部、中央仏教研究所において、各種の声明、政府機関への要望書、会議文書や議事録などの収集を行う予定である。ジャンムー市では、J&K州の新聞社を訪れ、記事を閲覧し、複写を行う。現地調査では資料を集めるだけでなく、適宜、関係者にインタビューを行う予定である。
研究をまとめるにあたり、収集した資料のデータベースを構築し、ラダックの仏教ナショナリズムをインド（南アジア）における宗教ナショナリズムの文脈に位置づけることにより、分析を行う。分析にあたっては、「仏教徒ラダック人」というネーションがいかに構築されたか、仏教は運動の精神的側面と具体的な活動の側面において、どのような役割を果たしたかについて、分析を行う。学会での発表、学会誌への論文の投稿を予定している。

研究成果

• [雑誌論文] インド，ラダックにおける仏教ナショナリズムの始まり ―カシミール近代仏教徒運動との出会い (2014)
  • 著者名/発表者名: 宮坂清
  • 雑誌名: 名古屋学院大学論集 社会科学篇 巻: 51巻2号 ページ: 249-260