本研究は,企業の事業活動への投資(設備投資および研究開発投資)にかかる将来予想情報(以下,投資予想情報とする)について,(1)投資予想情報開示の決定要因,(2)投資予想情報が企業価値に及ぼす影響,および(3)投資予想情報の予想精度が資本市場の評価に与える影響の3点を究明することを目的としている。平成27年度においては,(2)および(3)の論点を中心に据え,つぎの研究活動を実施した。 まず,投資予想情報が企業価値に及ぼす影響については,投資予想情報の水準は株価にポジティブな影響を及ぼすことを発見し,当該内容を取りまとめた論文を国際学会において報告を行った。その後,分析モデルの修正を行い,再分析結果を取りまとめを行っている。 また,投資予想情報の開示の有無と株主資本コストの関連性に関する研究も実施した。そして,投資予想情報を開示している企業は開示を行っていない企業と比べて株主資本コストが低い,つまり投資予想情報開示は資本コスト低下に資することが確認された。この研究についても国際学会において研究報告を行った。 最後に,投資予想情報の予想精度が資本市場の評価に与える影響については,投資予想情報の予想精度は必ずしも株主資本コストに対して影響を及ぼすわけではなく,コーポレート・ガバナンスの程度が低い企業に限って投資予想情報の予想精度が高い場合に株主資本コストが低減することを発見している。本研究成果については,国内学会において研究報告を行った。 いずれの研究成果についても,英文論文に取りまとめており,今後,海外ジャーナルへ投稿することを予定している。
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