研究計画に基づき、平成27年度に実施した研究の成果は以下の通りである。
(1) 平成26年度で持ち越しとなった一次文献や立法関連史料等の収集と解読・検討作業を行った。入手できた史料の多くが筆記史料であることから、解読作業と検討を同時に行っており、この作業は現在も一部継続中である。できるだけ早期にまとめて成果を発表できるように検討を急ぎつつ、平成26年度に達成した成果について、特に写真と絵画・版画との関係に関する学説・立法状況をまとめ、公表すべく論文を執筆中である。
(2) 個性あふれる傑作を生み出す偉大な作者を賞賛する、「独創性」と天才思想によって醸成された「ロマン主義」的な創作観があり、この「ロマン主義」的な創作観を前提として、彼らの保護を当然にそして強力に推進するような著作権法体系が形成されたという点がしばしば指摘されることについて、著作権法体系が形成された19世紀の議論を検討した。そして、当時の議論においては作者の保護のみに留まらない政策的・経済的配慮が存在しており、条文や解釈に落とし込むにあたっての法技術的な要素も考慮すべきであるため、単純に「ロマン主義」思想の影響を強く受けたと言い難複雑な状況にあることを明らかにした。また、「独創性」概念と著作権法の相互影響につき検討を行う文献に接し、この点につき更なる検討を必要とするとの示唆を得た。
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