研究課題/領域番号 |
26885019
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
綿村 英一郎 東京大学, 人文社会系研究科, 助教 (50732989)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 法心理学 / 社会心理学 / 量刑判断 / アンカリング効果 / 量刑分布グラフ / 求刑 / 裁判員 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、量刑分布グラフのアンカリング効果について、①実験材料となる裁判ビデオの作成および②基礎的データの収集を行った。裁判ビデオは、後々いろいろな可能性を検証する必要が生じたとき柔軟に対応できるよう、犯罪に遭った被害者の数などを変え、いくつかのパターン分けをした。さらに、H27 年度以降の研究計画に挙げた「検察官による求刑との相互作用」をふまえ、検察官の求刑についてもパターン分けし、結果として汎用可能性の高いビデオを作成することができた。②基礎的データの収集では、裁判ビデオを用いて、大学生を対象とした質問紙実験を2回行った。「量刑分布グラフのピーク(すなわち最頻値)がどれほど一般市民の量刑判断に影響するのか?」という問題については、自身の研究(綿村ら, 2014)の追試に成功したほか、今後の研究においてどのような要因に注目すべきかという点について、重要な示唆を得た。具体的には、量刑分布グラフのアンカリング効果には、ピークのほかにも上限・下限などの要因もかかわっているということ、「ピークがここにある」ということが絵的にわかりやすいことが重要であることが示された。一連の結果は、実際に量刑分布グラフが運用されている裁判員裁判においても、グラフの提示やその方法によって量刑が変わりうるということを示唆している。 以上の成果は、既に2014年度に同志社大学で行われた日本心理学会大会で、データの一部を口頭発表したほか、2015年5月に首都大学東京で行われる「法社会学会」のシンポジウムでも発表される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
裁判ビデオの撮影に関しては計画どおり完了したが、基礎的データの収集については、他の研究計画との時間および実験リソースにおける調整がうまく図れなかったため、やや不十分な結果となった。成果発表については、海外学会での発表がなかったという点を除き、おおむね計画どおり進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、H26年度に実施できなかった基礎的データの収集を急ぎたい。そのため、8月末を目安に2回の質問紙実験を行う。1つめの研究では、ピークの尖度を強調したときの影響について、強調しなかったときとの比較を行う。もう1つの研究では、量刑分布グラフ内の要因について、ピークのほかに、上限・下限に注目する。量刑判断ではないタスクとの比較により、量刑分布グラフ内のどの数値が強いアンカリング効果を発生させるのかを調べる。9月以降は、本研究計画の最大の焦点である「検察官の求刑との相互作用」について検証する。作成した裁判ビデオを編集し、検察官の求刑と量刑分布グラフを様々なパターンで組み合わせることで、量刑判断におけるアンカリング効果の包括的理解を目指す。
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