研究課題/領域番号 |
26885022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伏木田 稚子 東京大学, 大学院情報学環, 助教 (40737128)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 大学教育 / 学習環境 / ゼミナール / 授業外活動 / 学習成果 / テキストマイニング |
研究実績の概要 |
平成26年度は、ゼミナールの授業外での活動を多面的に把握するために資料調査を行った。具体的には、ゼミナールを運営する教員のホームページにアクセスし、ゼミナールの授業外での活動に関連する情報を検索・収集し、テキストマイニングを用いて特徴を明らかにしようと試みた。その結果、インターネット上で公開されている情報に限ってみると、サブゼミ、ゼミナール大会、ゼミコンパ、インターゼミ、ゼミ合宿の順に記録が豊富であることが示され、とりわけ人文系よりも社会科学系のゼミナールにおいて授業外での活動が広く展開されている傾向が示唆された。 さらに、サブゼミの概要を記述した文書に対して形態素解析を行ったところ、「行う」「学ぶ」「深める」「決める」などの動詞、「自主」「テーマ」「活動」「勉強」「参加」などの名詞が頻出語として抽出され、フォーマルな活動における学びをサブゼミが強化しているという接続性の強さが確認された。また、頻出語間の共起関係に着目した結果、サブゼミでは正規のゼミよりも自主的な活動や議論が中心で、知識の理解、研究への参加に力点が置かれていることが示された。 これらの知見は、先行研究において十分に考察されていないゼミナールのノンフォーマルな側面に新たな研究視点をもたらすという点で意義があり、今後、より詳細な実態の把握と「ゼミナールの授業外での活動が学習成果に与える影響」を検討する上で重要な切り口になると考えられる。続く平成27年度は、資料調査だけでは明らかにできない教員や学生の認識をインタビュー調査によって把握することに加えて、活動の進め方、教員の指導のあり方といった構成が、活動から学生が得た経験の内容や質、知識・理解・能力・態度といった学習成果にどのような影響を与えるのかについて質問紙調査を用いて明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、ゼミナールの授業外での活動を詳細に把握するために、活動の構成・経験・成果の3つの視点に基づいてインタビュー調査(半構造化インタビュー)を実施する予定であった。けれども、博士論文の執筆および審査に注力したことで資料調査の開始が遅れてしまい、それに伴ってインタビュー対象者の選定に難航したことから、研究目的の達成度が低くなったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
インターネットを活用した資料調査の結果、人文系よりも社会科学系のゼミナールにおいて授業外活動に関する情報がより広く公開されており、ゼミ合宿やインターゼミに比べてサブゼミ、ゼミナール大会、ゼミコンパの様相が把握しやすい可能性が示された。裏を返せば、人文系のゼミナールで行われている授業外活動や、多くのゼミナールが取り入れている合宿や学内でのゼミナール関連行事はこうした資料調査から明らかになりにくい部分であるため、インタビュー調査ならびに質問紙調査を実施する際は十分に留意する必要があるといえよう。また、調査協力者の都合がつかず、インタビュー調査が順調に進まない場合は、資料調査の対象を新聞・雑誌・著書・論文などに拡大することも視野に入れたい。さらに、インタビュー調査を行う中で、俯瞰的かつ全体的にゼミナールの授業外での活動を捉えるよりも、個別の事例に即して深くプロセスを追う必要があると判断された場合は、質問紙調査の内容および手順について再検討したいと考えている。
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