本研究の2年度目(最終年度)の研究実績としては、主に以下の作業を完了させた。 1.教師教育者の専門性を研究する海外の研究者1名への追加ヒアリング調査:昨年度に、教師教育者の専門に関する重大な研究を発表している研究者3名(ベルギー1名、オランダ2名)にヒアリング調査を実施したが、今年度はそれに追加して、ノルウェーの研究者1名に調査を実施した。ノルウェーにおいて展開されている、教師教育学を研究する博士課程の大学院学生を対象とした大学横断型の教師教育者早期養成プログラムの概要や設立の背景について話を聞いた。 2.国内の教師教育者へのヒアリング調査:国内の大学に所属する若手の教師教育者に、実際にどのようなことを課題に感じているのか、自分の大学での仕事をどのように捉えているか、ヒアリング調査を実施した。結果は分析途中であり、同ヒアリング調査は翌年度以降も継続的に行う予定であるが、「『教師教育者』という概念が定着していない日本の教員養成分野において、とりわけ教育学の関連分野を専門としない大学教員は教師教育者としての認識が薄いのではないか」という仮説は覆されたと言える。 3.研究成果発表 本研究の途中経過のまとめとして、2015年9月に開催された日本教師教育学会において「教師教育者の専門性とは何かーリフレクションの視点からー」と題し、口頭発表を行った。ここでは、①教育の質の向上、教師の資質能力の向上のために大学の教員養成課程のカリキュラムの改変や教職大学院の設置などが進められる一方で、それらを担う「教師教育者」については、ほとんど国内で注目されてこなかったことを説明したうえで、②「教師教育者」という概念の定義が国際的な研究の中でどのように変化してきたのかを概観し、③国外の「教師教育者スタンダード」の特徴をみた。
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