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2014 年度 実績報告書

更生保護制度における「当事者団体」に対する役割期待の多面的考察

研究課題

研究課題/領域番号 26885030
研究機関一橋大学

研究代表者

高橋 有紀  一橋大学, 大学院法学研究科, 特任講師(ジュニア・フェロー) (00732471)

研究期間 (年度) 2014-08-29 – 2016-03-31
キーワード更生保護 / 保護観察 / 当事者団体
研究実績の概要

平成26年度は、本研究の基礎となる情報をできるだけ多く収集し、更生保護制度における「当事者団体」について多角的に検討するための基盤を固めることを最優先の課題とし、以下の通り研究を進め、その経過を公表した。
【資料・文献の収集】 「①日本の更生保護制度の歴史と現状」「②英国との比較」「③医療や福祉の理論・実践との比較」の3つの視点から、更生保護制度における「当事者団体」について検討するため、それぞれについて情報収集を行った。
①については、九州大学、広島大学など国内の複数の大学図書館で、戦前期の思想犯保護観察に関する文献や資料を収集した。また、一橋大学図書館のデータベースを用い、更生保護制度の現状に関する書籍や論文を収集し検討した。②については、英国の更生保護制度の現状や犯罪者の立ち直りに関する理論的研究を扱った洋書を複数購入し、検討した。③については、薬物依存症や摂食障害の治療臨床における「当事者団体」に関する書籍や論文を収集した。くわえて、これらの疾患の回復過程に関する書籍や論文も検討した。
【聞き取り調査の実施】 軽微な万引きを繰り返す保護観察対象者への先進的な取り組みを開始した長野保護観察所および、同観察所の取り組みに専門的な知見を提供することで協力している長野少年鑑別所への聞き取り調査を行った。また、更生保護一般における保護観察所の役割について検討を深めるため、仙台保護観察所、福島保護観察所でも聞き取り調査を実施した。
【研究経過の公表】 英国の更生保護制度との比較法的研究について学会発表を行った。また、今後の更生保護実務への影響が大きいと思われる国内法の改正について論文を執筆し、学内の紀要で公表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

【順調に進展している点】
1.本研究が更生保護制度における「当事者団体」について考察する際の柱としている、「①日本の更生保護制度の歴史と現状」「②英国との比較」「③医療や福祉の理論・実践との比較」の3つについて、十分な資料・情報収集を行うことができた。これにより、平成27年度はこれらの資料の検討に注力できると考える。
2.長野での聞き取り調査を通して、万引きを繰り返す者(いわゆる「クレプトマニア」)による「当事者団体」の取り組みが始まりつつあることが判明した。当初の計画では、更生保護制度における「当事者団体」として薬物依存症者の自助グループである「ダルク」や刑事施設の出所者らの団体を想定していたが、平成26年度の聞き取り調査により、これらのみならず、「クレプトマニア」による団体の活動についても検討する必要性を見出すことができた。
【課題】
1.上記「②英国との比較」に不可欠であると思われる英国での現地調査については、研究代表者の移籍準備などの都合もあり、平成26年度中には実施できなかった。平成27年度の早い段階で実施できるよう、訪問先の選定や日程調整を行いたい。
2.平成26年度は交付決定が後期に入ってからであったため、研究経過の一部を公表するにとどまった。平成27年度は本研究の最終年度であるため、研究成果を投稿論文や学会発表としてまとめることを視野に入れて研究を進めたい。

今後の研究の推進方策

平成27年度は本研究の最終年度であることにかんがみ、後期以降に研究成果をまとめ公表することを視野に、特に以下の点に注力する。
【クレプトマニアによる「当事者団体」に関する研究】 平成26年度の長野調査で明らかとなった、いわゆる「クレプトマニア」の保護観察対象者らによる「当事者団体」について、更なる考察を加える。とりわけ、長野保護観察所の取り組みにおいては、平成26年度には訪問できなかった長野県内の更生保護施設や保護司会等が多大な貢献をしていることから、それらへの聞き取り調査を実施する。保護司や更生保護施設といった既存の更生保護の担い手と「当事者団体」との役割分担は、本研究が特に注目している点の一つでもあり、これらへの聞き取りには特に力を入れたい。くわえて、「クレプトマニア」については、すでに医療、福祉、犯罪者処遇などの分野で研究が進められている。それゆえ、それらに関する国内外の書籍や論文を収集し、それらにおいて「当事者団体」や「自助グループ」の活動にどのような意義付けがなされているのか考察する。
【比較法的研究】 「英国との比較」の観点からの検討をさらに深めるため、英国での現地調査の実施に向け早い段階から調整する。くわえて、英国の更生保護の取り組みに関する国内や英国以外の諸外国でのシンポジウムや学会に積極的に参加し、より多くの情報を収集する。
【研究成果のまとめと公表】 本研究で得られた知見を論文や学会発表を通じて公表するための準備を行う。論文については平成27年度中に公刊される学会誌や福島大学の紀要に投稿することを、学会発表については研究の進展状況や学会の開催時期によっては平成28年度に行うことを視野に、調査や資料収集で得られた知見を整理する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 刑の一部の執行猶予判断における刑事責任の位置づけに関する考察2015

    • 著者名/発表者名
      高橋有紀
    • 雑誌名

      一橋法学

      巻: 14巻1号 ページ: 211-237

    • DOI

      /10086/27167

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 「1960年代から70年代における英国の保護観察官の「ソーシャルワーカー性」の動揺」2014

    • 著者名/発表者名
      高橋有紀
    • 学会等名
      日本犯罪社会学会第41回大会
    • 発表場所
      京都産業大学神山キャンパス
    • 年月日
      2014-10-18 – 2014-10-18

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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