平成27年度は、平成26年度に行った資料調査、聞取り調査を踏まえ、さまざまな事情により、特定の犯罪や非行を繰り返す/繰り返す恐れの強い人について、既存の更生保護制度と「当事者団体」とがどのような支援をすることができるのかに主眼を置き、国内での資料調査、聞取り調査を行った。 平成26年度に実施した長野少年鑑別所、長野保護観察所での聞取り調査においては、窃盗を繰り返す者の「当事者団体」のに関心を持った。そのため、平成27年度は「窃盗症(クレプトマニア)」に関する資料調査を行うとともに、長野県の更生保護施設「裾花寮」への聞取り調査を行った。同施設は、長野県の保護観察所や少年鑑別所とも連携しながら、窃盗を繰り返す者による「当事者ミーティング」に会場を提供しており、その状況や意義について有意義な示唆を得ることができた。くわえて、「窃盗症(クレプトマニア)」のように、とかく第三者の客観的な判断により、対象者のリスクやニーズが判断されがちな者の更生保護において、「当事者」の主観や意志にどのように向き合うべきかにつき考察し、論文を執筆し公表した。 また本研究において、調査と並行して刑事政策関連の研究会、学会等に参加する中で、近年、更生保護制度の対象者として、起訴猶予処分や罰金、執行猶予等の判決を受けた者が増えつつあることと「当事者団体」との関係に関心を抱いた。この点は、平成28年度に開始される「刑の一部の執行猶予」において、より顕在化することが予想される。もっとも、この点について平成27年度は、起訴猶予処分や罰金の判決を受けた者を再犯防止の観点から、更生保護制度に繋ぐことの可否を検討し、研究会等で報告したにとどまる。それゆえ、本研究終了後も、この点につき継続的に検討していきたいと考えている。
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