平成26年度において、雇用調整を目的としたいじめに対する労働組合の取組みに関するヒアリング調査を行った。具体的なヒアリング先は、港合同、名古屋ふれあいユニオン、おおだてユニオン、なかまユニオン、ソニー労働組合仙台支部である。ヒアリングでは、①どのようないじめが行われたか、②いじめに対して労働組合としてどのように取り組んでいるか、③解決に向けた今後の課題の3点を中心に、労働組合執行部およびいじめ被害者を対象に調査した。組合執行部だけでなく、いじめ被害者もヒアリングできたことは、今回の研究の大きな成果であるといえる。以下、ヒアリング調査の結果について概略する。 調査の結果は、①については、いじめの態様としては不本意な配置転換(以下、配転)を行うケースが顕著にみられた。具体的に不本意な配転とは、(1)遠隔地への配転、(2)賃金の引き下げを伴う配転、(3)これまでの経験等と関係のない業務を伴う配転、(4)求職活動を業務とするような部署への配転である。 ②については、(1)団体交渉により配転の意図を明らかにするとともに、不合理と思われるものは撤回するよう要求、(2)会社側が配転の撤回要求に応じない場合、労働委員会に救済申入、(3)労働委員会と並行して裁判等の利用、があった。団体交渉については、人事権をもつ社長等の会社役員が出席せず代理人との交渉の場合は、平行線をたどる場合がみられた。したがって、いかに会社側の当事者を団体交渉のテーブルに着かせるかが要求実現にとって重要であるといえる。 ③については、職場での孤立化をいかに防ぐかが大きな課題として挙げられた。すなわち、地域ユニオンに加盟する労働者の多くは、職場に仲間となる労働組合員がおらず、たとえ労働組合の取組みにより会社によるいじめがなくなったとしても、職場で孤立することがある。この孤立化どのように防ぐかが今後の課題となっている。
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