研究課題/領域番号 |
26885035
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
堀田 亮 岐阜大学, 保健管理センター, 助教 (10733074)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 教育学 / 学力問題 / 教育系心理学 / 基礎学力 |
研究実績の概要 |
平成23年度にG大学に入学した全学生(約1400名)を対象に、入学年次(平成23年度)から3年次(25年度)までの3年間の基礎学力(英語運用,日本語理解,判断推理)や進路に対する意識,社会的強み等に関する調査データと、定期健康診断時を利用して実施した運動習慣やUniversity Personality Inventory(UPI)等の身体的・精神的健康に関する自記式アンケートデータを突合して解析を行った。 本年は、基礎学力の実態と経年変化を算出するとともに、基礎学力の高低に影響を与える心理社会的要因について検討を行った。進路に対する意識が基礎学力の変化に与える影響を重回帰分析で検討した結果、「働くことの意味」は基礎学力の変化に有意な正の影響を与えていることが示された。つまり、自身の将来について考えることは基礎学力の向上にも寄与することが示唆された。精神的健康と基礎学力の関連も検討した。単回帰分析の結果、UPI得点が低い、すなわち精神的健康度が高いほど、基礎学力は有意に向上することが示された。さらに、UPIの中のKey項目とされる、項目番号25(死にたくなる)の「はい」に○をつけた群は、「いいえ」に○をつけた群と比較して、1年次から2年次の基礎学力は有意に低下することが示された。以上より、大学生の基礎学力は精神的健康度の影響を受けることが示唆された。 卒業時の希望進路の達成度や精神的健康の評価を行うための追跡調査も、配布、回収まで調査の実施が完了した。データベース化は平成27年度に行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23,24、25年度の基礎学力調査のデータと、同年度の定期健康診断のデータの突合が完了し、統計解析を始めることができた。解析は、当初の計画通り進めることはできているが、対象者の属性や扱う変数が多様なため、様々な解析方法を行うことができると考えられる。従って、平成27年度も引き続き解析を行う予定である。 平成26年度に実施した調査に関しても、調査の実施までが完了しており、突合を行う準備は出来ている。従って、今後の解析も予定通りに完遂できるものと考えている。 学内の倫理審査は2015年2月4日付で承認済みのため、研究成果の報告や論文執筆を行う準備は整っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度にデータベース化したデータを用いて、縦断的な視点を用いた解析を行う。具体的には、以下の2点を中心に実施する。 1点目は、基礎学力の向上または低下に影響を与える心理社会的要因を同定することである。本研究で用いた心理社会的変数を独立変数に、基礎学力を従属変数に設定し、分散分析または重回帰分析を行う。この解析によって、基礎学力の向上または低下に影響を与える心理社会的要因を明らかにする。 2点目は、基礎学力の向上が大学卒業期に与える影響を検討することである。3年間の基礎学力のデータを基に、基礎学力の向上・維持・低下の群分けを行い、希望進路の達成度、大学への満足度、UPI、BMIを要因とした一要因三水準の分散分析(被験者間要因)をそれぞれ行う。この解析によって、基礎学力の変化が、希望進路の達成や大学満足度、精神的健康に与える影響を明らかにする。 得られた研究成果は、国内外の学会で公表するとともに、論文執筆を進める。
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