本研究は、大学生の入学後の基礎学力の実態と経年変化について明らかにすることと、基礎学力の経年変化に与える心理、社会、身体的要因について同定することを目的とした。 平成23年度にG大学に入学した全学生を対象に、入学年次から3年次までの3年間の①基礎学力(英語運用力、日本語理解力、判断推理力)、②精神的健康度(University Personality Inventory;UPI)、③運動習慣の有無、④読書習慣の有無、⑤進路に対する意識、⑥Body Mass Index (BMI)について回答を得た。実施に際しては、岐阜大学大学院医学系研究科医学研究等倫理審査の承認を得た(承認番号26-330)。 解析の結果、入学後、判断推理力が有意に低下していたものの、英語運用力は有意に向上しており、総計に有意な低下は見られなかった。UPIの得点でスクリーニングした精神的健康度低群は、精神的健康度高群に比べて、基礎学力の低下量が有意に大きかった。希死念慮あり群は、希死念慮なし群に比べて、基礎学力の低下量が有意に大きかった。運動習慣あり群は、なし群に比べて、基礎学力の総計と各下位分類のすべてで得点が高かったが、有意差は見られなかった。読書習慣あり群は、なし群に比べて、基礎学力の総計と日本語理解力が有意に高かった。進路意識は、働くことの意味を考えることが正の影響を、職業内容の理解が負の影響を基礎学力の変化に与えていた。BMIは、低体重群 (18.5 < BMI)が、普通体重(18.5 ≦ BMI < 25)、肥満群 (25 ≦BMI)よりも、基礎学力の総計、英語運用力が有意に高かった。 以上より、大学入学後の基礎学力に有意な低下は見られなかったものの、大学生の基礎学力の変化には、精神的健康度や生活習慣、進路意識、BMIが関連することが示唆された。
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