平成27年度は、これまでの研究成果に関し、日本私法学会において報告を行った。当該報告の概要は、学会誌「私法」第78号において公表される予定である。 また、新たな取組みとして、会社役員の対第三者責任制度の再検討を行った。というのも、近年、監視義務・内部統制システム構築義務について、対第三者責任(会社法429条)が裁判上問題となることが少なくなく、グループ経営に対する規律づけの観点からも同責任制度の意義は小さくないとの問題意識を有するに至ったからである。もっとも、対第三者責任制度については、昭和44年の最高裁大法廷判決以来、同判決の法理が所与の前提とされてきたところ、会社を取り巻く社会的・経済的環境の変化に合わせ、当該法理の再検討が必要であると考え、同責任制度自体の基礎的な研究を行った。当該研究の成果は、既に論文として公表済みである。今後は、当該成果を基礎として、企業グループにおける会社役員の対第三者責任制度の意義・役割についても、引き続き研究を続ける予定である。
|