研究課題/領域番号 |
26885040
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
狩野 文浩 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (70739565)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 社会的注意 / チンパンジー / ボノボ / 感情 / サーモ・カメラ / アイ・トラッキング |
研究実績の概要 |
本年度は、短い期間(スタートアップ支援の場合9月終わりから3月末まで)ではあったが、いくつか重要で有益な進展があった。 1)チンパンジーとボノボの社会的注意の違いの解明 ドイツ・マックスプランク研究所と京都大学熊本サンクチュアリ(KS)と共同で行ったアイ・トラッキング実験から、同種個体の顔を見ている時の目の動かし方に、顕著な種差が見いだされることが示された。現在、論文を投稿し、査読中である(マイナー)。 さらに研究を発展させ、ボノボ、チンパンジー、オランウータン、マカクザル、ヒトを対象に、同種の自然な行動(採食、物体操作、社会的交渉など)を映した動画を提示し、その動画を見ている時の目の動かし方に、種特異的なパターンがあることを見出した。個体特異の目の動かし方は、その個体の種属性を実に80%近い精度で予測できることが見いだされた。社会的注意の進化過程を考察するのに大変有意義な発見である。現在論文を執筆し、投稿準備中である。 2)サーモカメラによる、同種の情動的音声に対する顔の温度の変化の測定。感情研究は本プロジェクトにおける主要な課題であるが、そのために、サーモカメラを用いた感情変化に伴う、交感神経由来の顔の温度の変化の測定を進めていた。本年度は、同種の感情音声(喧嘩の悲鳴)を聞いた時のチンパンジーの鼻部位の温度の測定を試みた。現在データを分析し、論文の執筆準備をしている。予備的な結果によると、チンパンジーの鼻部位の温度は、同種の情動的音声を聞いた後30-60秒後に顕著に下がることが示された。この温度変化は、チンパンジーがはっきりとした行動の変化を示さなかった場合でも観察された。この手法の将来的な有用性が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
スタートアップ支援交付前にドイツ・マックスプランク研究所においていくつか研究を進めていたが、交付時に京都大学熊本サンクチュアリ(KS)に移動し、そのまま研究を継続した。 社会的注意の研究では、KSで暮らすチンパンジーとボノボを対象に同様の研究を行った。ドイツにおいて行った研究と比較可能なデータが得られるとともに、個体数の確保という意味で、結果の頑健さが保証された。全くスムーズであったといっていい。 サーモカメラを用いたチンパンジーの、同種の情動的音声に対する顔の温度の変化の測定も同様で、ドイツにおいて一つの実験を行っていたが、その成果を発展させるため、KSのおいてさらに研究を進めた。ユニークな実験環境を構築し、さらにデータの精度を上げることに成功した。これも半年という短い期間を考えると、全くスムーズであった。 成果は3編の論文(および学会)によって報告することを予定していて、現在査読中あるいは投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
春は現在遂行した研究について論文執筆に専念し、継続してデータを採取し、夏から新しいプロジェクトを開始する。順調であれば、冬にはデータ分析並びに論文執筆開始できると予定される。 秋には次年度予算(若手B)に申請する。
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