平成27年度は研究助成の最終年度であることから、各地において史料調査・収集を行うと共に、研究の取り纏め、成果の公表に努めた。具体的には、平成27年8月から9月にかけて、米国メリーランド州カレッジパークに所在する国立公文書館、テキサス州オースティンに所在するリンドン・B・ジョンソン大統領図書館にて史料収集を行った。前者では1958年から68年にかけての米国の対日核エネルギー政策に関する史料を、後者では1963年から68年にかけての対日核エネルギー政策に関する史料を部分的ながら収集した。さらに日本では平成28年3月に、東京都港区麻布台に所在する外務省外交史料館、東京都千代田区永田町に所在する国立国会図書館憲政資料室において日米ならびに日英原子力協力協定に関する史料を中心に調査・収集を行った。 そして前年度の史料収集の成果をも使用して、平成27年5月には大阪大学大学院国際公共政策研究科と防衛省防衛研究所との合同シンポジウムにて「日米核エネルギー協力体制の構築と形成 1952-1958」と題した発表を行った。また、同年11月には関西アメリカ史研究会において「日米原子力協定1955-1958:アイゼンハワー政権の冷戦戦略と対日政策の視点から」と題した発表を行った。さらに、『同志社アメリカ研究』において、査読付き論文「「日米原子力研究協定」への道程‐米国における核兵器使用の記憶と冷戦戦略」を公表するに至った。 このように平成27年度は、1955年および1958年の原子力協力協定を中心に、その形成過程を解明した。これは現時点において同様の研究が殆ど存在しないこと、また、日米原子力協定の改定が迫っている現在において、極めて有益な示唆をもたらすものであろう。今後は、予算不足ゆえに不十分に終わった1963年および1968年の協定交渉についての史料収集を行い、その分析と成果の公表に努める。
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