資本財の異質性を持つ貿易モデルにおいて、生産性にそもそもバラつきがあるという側面に加えて、新しい資本財は古い資本財に比べて生産性が高いという資本の経過年数を明示的に考慮するモデルを構築した。 新しい資本財は生産性が高く、結果として輸出用に使われる可能性が高く、ある程度時間が経過した資本財は自国向けに使われ、非常に古くなった資本財は生産に使われたにことが示された。企業レベルで考えると、新しい資本財の多い企業は輸出を行う可能性が高く、また、新たに輸出を開始する企業は資本財の平均経過年数が下がることが予想されることが示された。このようなメカニズムは直観的には当たり前であるが、従来の貿易に関する理論研究においては、資本財の経過年数を峻別していなかったために指摘されてこなかった。 また、消費財の異質性に関して、米国のConsumer Expenditure Survey(CEX)における消費分類と、米国のPersonal Consumption Expenditure(PCE)の消費分類の対照を行い、CEXの個票による消費をPCEの分類にあわせた財に集計した。得られた消費データと、CEXの所得データを用いて、それぞれの財分類ごとの所得の弾力性(奢侈性)を推計した。従来、数種類に大分類されることで同じ分類に入っていた財についても、その細分類では奢侈性がかなり異なることが明らかになった。例えば、衣類においては、子供服の所得弾力性が低く、成人女性服が続き、成人男性服は弾力性が大きいことや、医科治療サービスに比して、歯科治療サービスの弾力性が大きい、というようなことが計測された。 推計された奢侈性をもとに、PCEデータを用いて異時点間の代替の弾力性を推計すると、分類をより詳細にすることで得られる推計値がおおきくなっていくことが確認された。これは、従来の集計消費量を使った推計が、計測誤差を含むことで稀釈性バイアスを持っていることを示唆している。
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