本研究は、(1)批判的思考力育成の基盤となる地理教育の理論をカントの地理教育を手がかりに明らかにするとともに、(2)具体的に応用できる実践方法を、イギリス・アメリカの最新の地理教育の動向と、サマーヒル・スクールの実践をもとに解明した。大地に存在するあらゆるものを扱う地理学こそ、現実の多様な事物や事象に入り込むことができ、自分の見方を相対化する批判的思考力を形成することができる。しかしそのような批判的思考力は単なるスキルではなく、学問的な教科の知識と結びついた統合的な力である。さらにこの思考力は、地理の授業のみならず、多様な文化的な背景をもつ生徒どうしの討論を通してより現実的に形成される。
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