研究実績の概要 |
本研究の目的は,近世北ドイツの商人ネットワークの機能を,当時の経済活動に大きな影響を及ぼした制度に着目しつつ明らかにすることである。平成26年度の研究は,予測していた以上に重要な史料・調査することができたため,研究者はすでに本年度の課題であった制度とネットワークとの具体的な関連について論じることができた。 そこで本年度では考察をさらに一歩進め,制度の意味を広くとりつつ以下のことについて論じた。国家による経済活動促進的な制度を欠いていた近世ドイツ地域においては,戦争や各領邦の政策によって商業活動の維持継続が困難となる場合がたびたび起こった。それにも関わらずハンブルクの商業が発展することができたのは,商人が各地にもっていたネットワークを駆使し,上記の欠落を補ったためであった。 以上の内容を,研究者は2015年8月に京都で開催された世界経済史学会(XVIIth World Economic History Congress)のセッションにおいてTrading in coastal, riverside and rural areas: Why could Hamburg’s intermediate trade in the early modern period develop?というタイトルで発表し,M. DenzelやM. Northといった著名なドイツ人経済史家から高い評価を得た。 また,2015年8月の史料調査では,商人ネットワークを駆使した密貿易の展開について重要な情報を含む史料を発見し,これを制度的欠落を補う商人の対応策として位置づけた。その内容は,日本人商業史研究者たちによる論文集に寄稿した。すでに完成原稿を提出しているが,他の著者の論文執筆が遅れたため,残念ながら現在は刊行を待つ状態である。
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