2ヵ年計画の最終年度に当たる平成27年度は、1.1969年から1997年までの婚外子の共同配慮に関する裁判例の分析、2.学説における議論状況の分析、3.ドイツにおける現地調査の実施を研究の柱に据え、ほぼ当初の計画にしたがった研究を行うことができた。 1.裁判例の分析については、研究対象期間中の連邦憲法裁判所の裁判例を中心に、婚外子に対する共同配慮権(親権)が裁判上認められてきた経過を明らかにした。また、婚外子に対する共同配慮を認める上で、どのような憲法上の諸利益が顧慮されたのかについても、裁判例だけでなく学説における議論を素材として、検討した。 2.学説における議論状況については、主として1980年代以降の議論を中心に、婚外子共同配慮法制に関する具体的提案の構造と位置づけを解明した。学説においては、多様な改正提案が主張されていたが、それらの提案の一部は、現在の学説においても主張されており、歴史的な連続性を確認することができた。概ね計画通りに分析を進めることができた一方で、個々の学説の相違については、より精緻な分析を要するという課題も明らかになった。 3.本年度は、ミュンヘンにおいて実地調査を行い、日本国内では入手困難な資料を収集した。とりわけ、平成26年度中に新たに明らかになった、東西ドイツの再統一前夜の旧東ドイツにおける議論の析出という課題については、ミュンヘンにおける新資料の発見があった。 平成27年度は、収集された資料の分析・検討と平行して、研究成果を学術論文にまとめる作業を行った。年度中に論文を公表することはできなかったが、平成28年中には論文を提出する予定である。
|