研究課題/領域番号 |
26885063
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
藤原 智也 愛知県立大学, 教育福祉学部, 講師 (50737822)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 美術科教育 / 教育政策 / カリキュラム / 統合-分化原理 |
研究実績の概要 |
第一に学校カリキュラムの統合-分化原理について、その四類型の概念を支える背景について検討した。具体的には、M. スキーロ(Micheal Schiro)の著書『カリキュラム理論(第二版)』(Curriculum Theory:Conflicting Visions and Enduring Concerns)で示された四類型、分化原理に基づく教科/学問中心主義、統合原理に基づく子ども/学習者中心主義、社会改造主義、社会効率主義について、E.アイスナー以降の現代カリキュラム研究を含めてこれらの差異を明らかにした。これらの立場は、第二次大戦前の米国にて提出されていた。 日本では、子ども中心主義と教科主義の対立軸による認識枠組みがいまだに根強い。しかし、これらはいずれも学校教育という社会的に脱文脈化した制度によって成立している意味において、学校中心主義である。一方、学校カリキュラムの編成原理に社会的要請を組み込む立場が社会中心主義であるが、社会改造主義は民主主義の論理を背景に地域共同体の社会的紐帯の強化を、社会効率主義は資本主義の論理を背景に市場経済で有用な人材養成を、それぞれ学校教育に求める。 第二に、これら四類型の枠組みをもとに、臨時教育審議会(1984-1987)以降の教育改革について、教科等の構成の議論がどのように政策的に進められたのか、美術科教育がどのような位置づけがなされてきたのかを分析することで、その特質の一端を明らかにした。 第三に、教科枠組みにおけるカリキュラムの統合-分化原理について、教科内での統合原理の作動によって他教科との差別化、分化を図る論理が提出された事例について明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題について、おおむね当初の計画どおり進んでいる。第一に、学校カリキュラム統合-分化原理による四類型と教科等の構成に関する理論的研究を行い、その成果は第37回美術科教育学会上越大会にて口頭発表を行った。第二に、我が国の臨時教育審議会後の教科等の構成における美術科の政策的位置づけについても、教育改革の文脈で登場したカリキュラムの統合原理をもとに明らかにした。第三に、学校カリキュラムの統合-分化について、教科内での統合原理の適応によって他教科との差異化、分化を図る事例について明らかにし、日本美術教育学会の学会誌論文に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度となる二年次では、すでに明らかにした学校カリキュラム統合-分化原理における四類型と、それをもとにしたマクロレベルの教育政策上の美術科教育の位置づけを踏まえつつ、臨時教育審議会以降の美術教育の実践研究で提出された言説を検討し、ミクロレベルでの分析に移行する。
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