本研究の目的は、フランスで実施されている付添い支援が地域格差を深化させる構造上の問題について、青年支援局(Mission Locale:ML)で実施されている支援の実態から考察することにある。本年度は、若年貧困の地域格差と付添い支援との関連について調査を実施した。研究成果の一部は『ユーロ危機と欧州福祉レジームの変容』所収、第4章「福祉・復職支援の一体改革に見る福祉レジームの再編」のなかで公表している。 調査によってMLの情報共有システムの存在とその運用状況について知見を得ることができた。また、ML間の情報共有によってはじめて、MLの付添い員の間で若年貧困の地域的集中ないし地域間格差が把握されていること、さらに、MLの支援改革が模索されていることを知るにいたった。以上の調査より、若年貧困の問題が居住地、学歴、移動手段等によって規定され、このことが付添い支援をつうじた雇用復帰の強化によって助長される一面を有しているという構造的問題を把握することができた。この点についてはパリ市内のMLの間でも問題が共有されていることから、今後の研究において、MLの支援改革の動向について調査を進展させていきたい。 本研究ではまた、パリ市内のMLと地方都市のMLを比較分析するための予備調査を実施した。地方都市では産業の衰退が家庭環境により密接にかかわっているほか、地域特有の問題も抱えている。そのため、地方都市のMLにおける支援は、地域によっては雇用復帰に重点をおくよりむしろ、若者の生活・家庭環境の改善に重点を置くケースもみられる。一方、都心のMLでの支援は、仕事と若者の結びつきを重視しながら社会的な課題に取り組んでいる。今後、都心と地方都市のMLの比較についても研究を進めていきたい。
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