研究課題/領域番号 |
26885074
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
顧 濤 明海大学, 経済学部, 講師 (80734756)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 経済政策 / 中国経済 |
研究実績の概要 |
2014年度には本研究課題に関して2本の学術論文を公刊している。いずれも高度経済成長の中国において観察される過剰投資と過少消費という現象に焦点を当て理論的に分析を展開している。 顧濤(2015)では、中国における労働市場の買い手独占に関してミクロ基礎づけを提供している。資本市場においては企業統治の不完全性に企業経営者の過剰投資傾向を導いている。上述した生産要素市場の歪みが、企業部門から家計部門への労働所得と資本所得の過少支払いをもたらし、このことは企業には大量な内部留保を蓄積させ、最終的に過剰な資本蓄積を促した。また、生産要素市場の歪みの度合いに応じてモデルを用いて過剰資本蓄積の規模を計算した。この論文は市場経済への移行後の中国においても顕著な市場の不完全性があった点に資本投資の非効率性の源泉を求めており、中国経済分析に対して新しい視点を提供している。 一方、Gu Tao(2014)はおおむね上記の論文と同じフレームワークを採用しているが、2点ほど改善した点がある。第一に、企業経営者の過剰投資傾向は、近年に多くの文献によって明らかにされた地方政府におけるGDP競争という仮説に結びついた。 すなわち、企業経営者が投資性向を有している原因は、地方政府より有利な経営環境を確保したいという点にあると考えられると同時に、地方官僚は、投資活動に応じてくれる企業にも便益を図りたいという思惑があることも思われる。第二に、過剰投資と過剰消費の経済において社会全体で被った経済厚生の損失について構築したモデルより計測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に関する研究成果として2014年度に2本の査読付き学術論文を公刊している。また、研究実施計画に予定した企業の最適行動を組み入れる研究に着手している。上述した状況よりおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は大きく2つの方向で研究を推進する予定である。まず、中国の省レベルのデータベースの構築である。省レベルのデータに関する分析を通して、各省において異なる成長パターンが存在するかを確認する。また、中国における企業経営者の過剰投資性向に対して実証研究の結果に依拠しながら、ミクロ基礎づけを有するモデルを構築する予定である。 研究成果は年度内に論文としてまとめ、学会などで研究報告を計画している。さまざまなフィードバックに基づいて論文を改善していく。
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