2015年度には本研究課題に関して1本の学術論文を公刊している。また、学会報告も1回予定している。この2本の研究は、中国経済における過剰資本蓄積に関して、不動産市場との関連性の視点より研究を試みている。家計向けの住宅市場の改革を契機として、ここ数年住宅建設が盛んに行われている。中国の経済成長を理解するに当たって不動産市場及び不動産市場とマクロ経済の関連性についての分析が欠かせない。 顧(2016)では、中国経済における過剰資本蓄積に対して、近年に活発な不動産開発との関連に注目し、中国のマクロ経済と不動産市場との関係について研究を展開している。論文の前半では、欧米を中心とする不動産市場とマクロ経済に関するサーベイ研究を行った後に中国経済に限定した先行研究をまとめている。論文の後半では、都市レベル、省レベル及び地級市レベルといった異なる地域データを用いて、住宅投資の決定要因及び住宅価格の価格形成について、予備的な回帰分析を行っている。推定結果によれば、人口要因や平均賃金及び貯蓄額などは不動産市場に対して有意に影響を及ぼしていることが観察された。 一方、予定されている学会報告の論文では、上述した研究を拡張している。具体的には、まず住宅投資の決定要因及び住宅価格の価格形成について推定変数の追加や推定モデルの工夫などでさらに精緻な回帰分析を展開する。次にマクロ経済の変動と不動産市場との関係について時系列分析の手法を用いて、両者の関連性を検証する。
|