研究課題/領域番号 |
26885077
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
高橋 舞 帝京平成大学, ヒューマンケア学部, 講師 (50735719)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 教育学 / 教育思想史 / 教育メディア / 世代継承 / 戦争記憶空間 / 民衆の記憶 |
研究実績の概要 |
本研究は、慰霊碑や戦争歴史館など戦争の痕跡が遺されている戦争記憶空間を、戦争に抵抗する「戦争の記憶」継承を担う場として位置づけ、1.戦争記憶空間が戦争に抵抗する継承・教育メディアとして機能する条件および、2.その効果を補強する教育的援助の在り方を解明するものである。 まず2.の課題解明にあたり、平成26年11月初旬に沖縄への修学旅行が予定されていた神奈川県立秦野高等学校の事前・事後指導の非参与観察に入り、事前・事後指導で制作された感想文などの制作物の提供を受けるとともに、修学旅行を取りまとめる主任教員や修学旅行に同行する日本史の担当教員にインタビュー調査を実施した。続いて1.の課題解明にあたり、同年11月下旬、平成27年3月初旬の2回にわたり、沖縄県の戦争遺跡の非参与観察および、沖縄県立平和祈念資料館の館員へインタビュー調査を実施した。 上記の調査研究からは、戦争の記憶継承の在り方および、戦争記憶空間が戦争に抵抗する機能を持つ条件として、(1)知識を得る際に、同時に「知らないことの多さへ気づき」が付随され、「問い力」が生じる。(2)行動主体として生成する「他者(死者)との出会い」が生じる。という以上の2つの条件が連動することで成立することが明らかになった。 また上記の条件をいかに教育的援助によってサポートできるか、という点に関しては、沖縄県立平和祈念資料館の独自の取り組みとして、資料館の館員を現職の社会科教員に担わせることで、学校現場に還元していく体制を持っていることが明らかとなった。今後、資料館館員を経て学校現場に戻った教員たちを追跡調査することで、2.の課題解明にあたっては、より有効な手立てが導かれる方途が拓かれた段階にあると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
26年度中にフィールド調査を行う予定であった、韓国「ナヌムの家 日本軍「慰安婦」歴史館」が改装時期にあたったため、また、神奈川県秦野市立鶴巻中学校への非参与観察・インタビュー調査が、修学旅行時期が春季にあたるため27年度に持ち越されたことにより、調査が遅延している。ただし、課題解明にあたっては、26年度中に実施されたフィールド調査によって有意味に抽出されており、加えて実施が遅延している2件も、ともに27年度遂行にむけて先方と調整できているため、大きな問題はないと考える。 また研究実績の概要に示した通り、沖縄県立平和祈念資料館に勤めた館員の追跡調査を行うことで、2.の課題に関しては、当初の予定を上回る有益な知見が得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、持ち越された韓国「ナヌムの家 日本軍「慰安婦」歴史館」および神奈川県秦野市立鶴巻中学校への非参与観察、インタビュー調査を実施する。 さらに、研究実績報告に示した課題2.の解明にあたって、 1.26年度中にフィールドに入った神奈川県立秦野高等学校において、修学旅行指導に関わった主担当教員に追加のインタビュー調査を実施する。修学旅行を経た指導観の変化を見ることで、より改善された、戦争記憶空間が戦争に抵抗する継承・教育メディアとして機能することを補強する教育的援助の在り方が抽出されると考える。 2.26年度中にフィールドに入った沖縄県立平和祈念資料館においてインタビューをとった主幹館員が、平成27年度より学校現場復帰となったため、追加のインタビュー調査を実施する。これにより、他県に比べて「戦争の記憶」継承がなされていると考えられる沖縄県独自の教育的援助の取り組みおよび在り方が抽出できる可能性があると考える。 以上から得られた研究成果を統合し、所属学会での学会発表および学会誌投稿を積極的に行い、研究者による評価を得ると共に、研究協力を得たフィールド先で成果報告行い、研究成果の教育実践の場への紹介・普及に努める。
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