平成26年度は、研究論文"Informed Principal Problems in Bilateral Trading"の分析・執筆作業を重点的に進めた。
政府が、行政調査等により独占企業の私的情報を既知とする状況を考え、消費者への情報公開の有無が、財配分の効率性および分配のそれぞれに対して、どのような影響を及ぼすかを明らかにした。独占企業の情報が公開される場合、その情報は共有知識となる一方、消費者の情報は私的に保有されたままとなる。したがって、利潤最大化を目的とする独占企業は、販売メカニズムを適切に設計して消費者の私的情報を引き出すことになる。第一に、情報公開時の独占企業にとっての最適メカニズムを特徴付けた。第二に、情報非公開時に独占企業が均衡で選ぶメカニズムとしてLCS(Least-Cost-Separating)メカニズムに焦点を当て、その特徴付けを実施した。その際、Roger Myersonの実質的価値(virtual valuation)に追加される形で、「シグナリングコスト」(と本研究で呼ぶ)の概念が鍵となることを発見した。第三に、それぞれ二種類のメカニズム(情報公開時の最適メカニズムと情報非公開時のLCSメカニズム)の特徴付けを通じて、情報構造の変化が配分効率性と分配に与える影響を明らかにした。
以上の結果をディスカッションペーパーとしてまとめ、Social Science Research Network上にて公開した。
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