本研究は職域における所得格差と健康水準との関係について分析を行うことである。労働が不効用ではなく効用を生む場合を含めて、合理的な個人が予算と時間の制約の下で意思決定を行う理論的なモデルを構築して考察を加えた。また、平成15年度から平成25年度の132ヶ月にわたって全ての健康保険組合の月次データを情報公開請求を用いて入手してパネルデータを構築し、実証分析を行った。特に分析対象期間中に発生したリーマンショックと東日本大震災という外生的なショックが与える影響にも注目して分析を行った。その結果、リーマンショックが男性平均給与所得の減少や企業内格差の拡大に大きく寄与していたことなどが明らかになった。
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