本研究は、「グローバル金融市場における証券担保金融の効率性」と題し、これまで代表者が行ってきた国際金融市場の効率性を高める制度設計に関する研究を発展させ、海外金融市場で生じたショックが国内証券担保金融市場に波及する場合、市場取引の効率性がどの程度低下するのか、効率性を回復するための政策対応の余地はあるのか、といった点について、ミクロ経済学の保険契約理論を用いて分析する予定であった。 本研究は、当該分野の海外有識者3名との面談と、国内3大学でのセミナーの討論を踏まえ、以下2つの研究論文として結実しつつある。 第一に、証券担保金融による貸出を貸手が現金で回収できたとしても、外国為替市場における取引の流動性が十分ではない場合は、貸手は外国財の購入に当たり、手持ち現金の外貨換算額が変動するかもしれない。その場合は、外国財の消費量が変動する、という不利益を貸手は被る。この不利益は、中央銀行が不足する外貨を供給する、という伝統的な外国為替介入政策により解消することができる。 第二に、証券担保金融による貸出を貸手が現金で回収できたとしても、貸手が国内財の消費のタイミングを早める場合は、貸手は国内財の購入に当たり、手持ち現金の購買力が変動するかもしれない。その場合は、国内財の消費量が変動する、という不利益を貸手は被る。この不利益は、中央銀行が不足する国内材を供給する、という非伝統的な政策により解消することができる。この政策は、グローバル金融危機後に米国で採用された担保資産貸出オペレーション(中央銀行が貨幣を供給するのではなく、担保資産を供給する)の理論的根拠を提供するものである。
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