本研究の目的は、国家と市民社会、さらには市民社会内部で、ガバナンスのルールをめぐってどのような正統性争いが生じているのかを解明することにある。この目的のもと、特定非営利活動促進法(NPO法)制定・改正過程を中心に、中央/地方の両面から実証的な検討を行った。平成27年度は以下の課題に取り組んだ。 1.東京調査:NPO法制定・改正への中央の市民団体の関与について、平成26年度の調査等を踏まえて分析を行った。その成果として、日本NPO学会の学術誌に掲載された論文では、民主党政権の発足後に中央の運動団体シーズが政策志向的学習に関与したこと、ねじれ国会発生後は政策ブローカーとしてNPO議員連盟と各党の調整を進めて法改正が実現したことを明らかにした。また、関東社会学会の報告では、シーズのロビイング戦術はアウトサイド戦術とインサイド戦術に分けられること、これらの戦術が一年間を通してスケジュール化され繰り返されたこと、その間にアウトサイド戦略の頻度は下がりつつインサイド戦術は毎年働きかけ、政権交代後に運動の目標を達成したことを明らかにした。 2.地方調査:NPO法制定・改正運動への地方からの関与について、地方の中間支援組織を対象とする調査を行った。平成26年度の予備調査に続けて、平成27年度は北海道・茨城県・兵庫県・福岡県の中間支援組織の関係者と、中央・地方を繋ぐ日本NPOセンターの関係者に聞き取りを行った。この成果等を踏まえて、社会運動論研究会の報告では、地方の中間支援組織が各地域のNPOを立法運動へと「集団丸ごと加入」させ、地元選出の国会議員にアジェンダ・セッティングを行ったこと、立法運動を通して中央の運動団体が地方のNPOに知識の伝播を行ったこと、他方で法律の履行段階では、中央と地方での戦略の違い、地方ごとの政治条件や中間支援組織の政治的影響力の違いが発生していたこと、を明らかにした。
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