本研究は,憲法学において理論的観点からは殆ど検討されていなかった「判断過程統制」に関して,その憲法理論上の問題点を明らかにすることを試みた。立法裁量の「判断過程統制」は,「立法者の努力」を法律の違憲審査の基準とすること,それと類似していると指摘されるドイツの「主張可能性の統制」は,比例原則という実体的な審査手法とともに用いられていること,そして,このような「判断過程統制」は,これまで無意識的に措定されてきた「違憲」概念・「権利」概念・「裁量」概念の変容を迫り得るものであり,これらの基礎概念の再検討を必要とすることを本研究は明らかすることができた。
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