研究課題/領域番号 |
26885096
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
豊田 紳 早稲田大学, 政治経済学術院, 助手 (20636120)
|
研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
キーワード | 一党独裁体制 / 選挙権威主義体制 / 覇権政党制 / 政治体制変動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、独裁体制における党内競争選挙および党間競争選挙の実施が、当該独裁体制の維持と崩壊に与える影響について、理論およびデータセットを構築することである。このうち、本年度は理論構築および理論構築のために必要な様々なファクトについて、体系的な収集を行った。 その過程で、3つの説明を要する顕著な事実が明らかになった。すなわち、①旧ソ連・東欧諸国のような共産党一党独裁体制国家をはじめとして、アフリカの一党独裁体制そして一党独裁体制時代の台湾のような国においても、1960から1980年代のいずれかの時点において、複数候補者が立候補可能な競争選挙が行われていた。一般に、一党独裁国家では複数候補者が立候補する競争選挙はまれであると思われていたので、この発見は重要である。 ②しかも、そうした一党独裁国家における複数候補者間競争選挙(党内予備選挙を含む)は、ベトナムの議会選挙における複数候補者制や中国の差額選挙制度など少数の例外を除いて、淘汰された。 ③そして、その後を襲ったのは、周知のように、選挙権威主義体制であった。すなわち、一党独裁体制とは異なり、公式に野党の存在が認められており、複数政党間で競争選挙が行われるにもかかわらず、選挙制度・選挙管理制度・政党登録要件・そして政権与党による行政資源の恣意的・政治的配分そして選挙不正により、野党には選挙に勝利する可能性が事実上、存在しない独裁体制であった。 上記①②③の事実は、以下のような問いを惹起する。すなわち、一党独裁体制の独裁者にも何らかの形の競争選挙を実施するインセンティブがあるが、一党独裁体制の下での競争選挙は長期的に存続不能であり、複数政党制の下での競争選挙でなければならない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究を実施した直後の11月に、体調不良のため入院した。その後、翌2月まで静養する必要があった。3月以降は研究に復帰したものの、研究にブランクが生じたことから、研究推進体制を再構築する必要があった。他方で、4月以降は必要なデータの収集および理論構築作業に着手することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
上述の問い、すなわち「一党独裁体制の独裁者にも何らかの形の競争選挙を実施するインセンティブがあるが、一党独裁体制の下での競争選挙は長期的に存続不能であり、複数政党制の下での競争選挙でなければならない理由とは何か」を説明する理論を構築する。これは、フォーマルモデルで表現する。 他方で、当初の研究計画では、来年度はただちにデータセット構築に着手する予定であったが、より精緻な理論を構築してからデータセットの構築を行うことにする。
|