一連の研究は,自転車利用者が違反(特に一時停止義務違反)をする理由の解明と行動の改善を目指すものである.平成27年度は主に次の2点を実施した. 1. 自動車を対象に行った先行研究では,一時停止交差点の通過行動について,誰が運転しているかがわからないように加工した映像を運転者本人に見せると,自分の運転を批判することや映像の運転は普段の自分の運転よりも危険であると評価することが指摘されている.これらの自己評価バイアス(セルフイメージと実行動の乖離)が自動車だけではなく自転車の場合も見られるかを明らかにするために,前年度の実車実験時に撮影した通過映像を用いて実験参加者20名を対象に対面実験を行った.統計的検討の結果,自転車の場合は自動車の場合に比べて自己評価バイアスがあまり見られないことが明らかになった.インタビュー調査を行ったところ,「一時不停止が違反であることは知っているが,一時停止しなくても危険だと思わない」と話す実験参加者が多かった.自分の通過行動を適切に評価できる・できない以前の問題として,安全運転のための規範の形成が必要であることが示唆された. 2. 前年度に撮影した通過映像を用いて,同一人物による優先側および非優先側運転時の通過行動の違いを分析した.統計的検討の結果,優先側に比べて非優先側運転時は,自転車と自動車ともに交差点の確認回数が多く,自転車と自動車ともに交差点の確認時間が長かった.一方で,通過時間は自動車の場合は長かったにもかかわらず,自転車の場合は短かった.したがって,自転車の場合はたとえ非優先側を走っていることを意識していても速度を落とさないことが明らかになった. 以上の研究成果は,論文および学会発表により報告を行った.
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