本研究の目的は、「アメリカが世界に対してどのように関与すれば、世界はもっとも安定的な安全保障・平和的秩序を維持できるのか」という問いを検討することである。この問いに関してはこれまでに数多くの様々な研究が積み重ねられてきたが、それらの研究の多くは往々にして抽象的な議論に終始しており、「関与される側の論理」、すなわち、アメリカによる「深い関与」に直面した世界が実際にどのように動くのか、その内部の論理を実証的に研究する試みは不十分であると言わざるを得ない。したがって本研究は、先行研究におけるこうした空白を埋めるために、地政学という要素を重視し、国際政治理論の観点からの抽象的な議論に加えて、緻密な一次資料解析とフィールド調査を組み合わせることで、上記の問いに対して理論・実証両面から検討を加える試みである。
平成27年度には、校務の関係もあり、フィールド調査に出掛けることができなかったが、その分一次資料と先行研究の読み込みとデータベース作成、そして論文執筆に時間を使うことができた。その結果、アメリカの対中東政策に関して学術論文を1本(米国の対『イスラーム国』軍事作戦をどう評価するか?」『中東研究』第523号)と学術論集の1章分(「冷戦後の国際政治と中東地域の構造変容:米国の対中東政策を中心に」松尾昌樹・岡野内正・吉川卓郎編『中東の新たな秩序』ミネルヴァ書房)を発表した。加えて、現在執筆中の英語論文が平成28年度中には刊行される予定である。
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