本研究の目的は,日本企業におけるダイバーシティ・フォールトライン(以下,DF)とパフォーマンスの関係を定量的に明らかにすることである。DFとはある職場において個人が持つ年齢や性別,職歴などの多様性によって形成されるサブグループの同質性を測定した概念である。昨今,日本の企業組織ではグローバル化に対応するために性別や国籍の多様性をはじめ,正規・非正規・限定正社員などの雇用区分の多様性,経験職能の多様性など人事事項に関する多次元において多様性が進展している。本研究では,DFの視点から捕捉した場合に日本の企業組織における多様性の実体,およびDFと組織パフォーマンスとの関係を明らかにすることを目的としている。 昨年度は計画通り以下の2つの点で研究を進めた。一つ目は,日本企業を対象としたダイバーシティ・フォールトラインに関する質問紙調査の実施である。前年度,既存研究のレビューによって設計した分析モデルと質問紙調査をもとに質問紙調査を実施した。申請者が関与している女性活躍やワークライフバランスについての研究プロジェクトにおいて質問紙調査の実施をし,調査の一環として本研究のDFについての調査項目を入れた。 二つ目はその質問紙調査で得られたデータを分析することによって実証的に仮説検証をすることである。現在,DFとパフォーマンスの関係を分析モデルにもとづき計量分析によって検討している。
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