本研究は,ベンチャーキャピタル(VC)によるシンジケーション(ある企業に対して、複数の投資家が共同で投資を行うこと)と投資リスクの関連性を明らかにするという目的に沿って,VCのシンジケート投資に,投資環境を踏まえたリスク指標を活用し,実証的な分析を行うものである。 本年度は,当初の研究計画どおり,昨年度の予備的分析を踏まえて,VC投資データを再構築したうえで実証分析を行い,その取りまとめを行った。なお,昨年度の分析を発展させた具体的な部分は,以下の2点である。 1. さまざまなリスク指標について,投資家サイドのリスクだけではなく,ベンチャー企業サイドのリスクも加味すること 2. 近年(~2014年)のIPO増加傾向や実務家の方々との意見交換やヒアリングの結果から,対象年度とするデータセットの数を拡張すること 本年度の分析により,リスクの高いベンチャー企業への投資ほどVCによるシンジケート投資が行われているという結果が得られた。つまり,シンジケーション構築の背景には,リスク軽減を目的としていることが,実証的なエビデンスとして確認されるものである。 この実証分析結果は,VCのシンジケーションについて,既存の研究と合わせて一定の理論的な統一解を提示できるものであり,学術的な意義は大きい。また,実務的にも,リスクに対する投資の意思決定が明らかとなっており,VCの投資指針としても大きな礎となるものである。
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