研究実績の概要 |
本研究の目的は、18世紀後期イングランド啓蒙の特徴を明らかにするために、ジョセフ・プリーストリー(Joseph Priestley, 1733-1804)の宗教・科学・経済に焦点を当てることであった。プリーストリーにとって科学とは、神ないし創造者が地球上に埋め込んだシステムを解明するという意味で宗教的な側面からの営為を含みつつも、実際に埋め込まれたシステムを運営するのは人為にも焦点を当てた。科学的知識を産業革命の推進のために利用しようとしたのであった。 富の拡大はあらゆる人々に影響を与えたが、富を増加させるためには知識の増加が必要であり、知識の増加は神学的に制限されているような状態では達成されない。イングランド啓蒙は、このように宗教的側面を保持しつつ、国家に個々人の知識の追求の自由を要求し、知識の増加に伴う富の拡大および富裕が人々にもたらす効果がいかなるものかに着目した。 この目的を達するために、これまで出版されている著作から彼の思想のエッセンスを抽出し、その特徴を明らかにするとともに、彼が影響を与えたり、影響を受けたりした人物たちとの知的ネットワークを考察した。まず彼の著作における様々な事象を整理し、彼がどのような方法でイングランド啓蒙を展開していたかを明らかにし、その思想形成および伝播がどのようになされたのかを著作だけでなく手稿や彼の知的ネットワークを明らかにする手紙や当時の歴史状況などを詳細に調べ、その特徴を明らかにした。
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