本研究は、PFI(Private Finance Initiative)事業で実施される入札の競争性について、実際のデータによる実証分析を行ったものである。PFI事業とは、従来の公共事業に民間の資金やノウハウを活用するために実施されるもので、日本では1999年にPFI法が施行されて始まった事業スキームである。 PFI事業を実施する民間事業者は、競争入札を通じて選定されることになっている。これまでに行われたPFI事業での競争入札のデータを用いて実証分析を行った結果、特に入札に参加する事業者数と入札結果との関係において以下の二つのことが明らかとなった。 まず、入札に参加する事業者数が増えると、入札を通じた競争の効果で落札価格が下がる(Harada(2015))。具体的には、実質的競争者数(落札する可能性のある事業者)が1社増えると、落札価格は3%程度下がることを示した。この実質的競争者数は、計量経済学における操作変数法と呼ばれる手法を用いて求めたものである。 次に、事業の質に関する提案である非価格要素の競争性に着目した研究では、実質的競争者が増えると落札者の非価格要素での得点率も上昇することを示した(原田(2016))。すなわち、入札に参加する事業者数が増えると、入札を通じた競争の効果で事業の質に関する提案も改善されることを明らかにした。この非価格要素の得点率は、事業ごとに審査の過程で得点化され公表されるもので、本研究では審査講評を一件ずつ入手することで分析可能なデータとした。 以上の2つの結果から、PFI事業で実施されている入札による競争はよく機能していることが明らかになったと言える。また、競争性を高めるためには、単に多くの事業者が入札に参加するだけではなく、落札して事業を実施するに十分な技術力や資金力を持った事業者(実質的競争者)の多くの参入が必要であることも併せて示された。
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